いつものサテンでまた

生きてると、まーいろんな人に会うもんですわ。

不細工なクリスマス

デートなんて、初めての事だった。

 


恋愛なんてフィクションだと思っていた。

 


鏡に映る私は、丸々と太っていて、鼻の穴は何か詰めてあるみたいに膨らんでるし、まるでお相撲さんに長いカツラを被せたような…とても美人とはいえない…いや…

 


ブスなのだ!

 


しかし、今年のクリスマス。

 


私の人生は大きな変化を遂げる事となる、かもしれない。

 


10年前…私がまだ21歳だった頃。

 


雑誌の文通友達募集コーナーで彼と私は出会った。

 


別に彼氏が欲しくて文通を始めたのではなく、そもそも私なんかに彼氏どーのこーのいう筋合いなんてないと思ってたし。

 


ただ、ジミヘンドリクスやクリームが好きな友達が一人もいなかったから。

 


そういうわけで、最初は音楽の話ばかりしていた。

 


それが少しずつ、お互いの話をするようになっていったのだ。

 


田舎のパン屋で淡々と食パンやクロワッサンを焼き続ける私と、都会のオフィスで英語やフランス語を操る彼は、あまりにも住む世界が違いすぎた。

 


彼の手紙を読むと、一度も行ったことないはずの東京の景色が自然と目に浮かんで、ワクワクした。

 


ああ。

 


私は今、新幹線の窓際の席に座り、ビシッと姿勢を正している。

 


そう、ペンフレンド10周年記念にクリスマスデートをしないかと突然に手紙をもらったのだ。

 


それで、こんな私じゃ会ったらガッカリされてしまうだろう、と…。

 


どう断ろうか必死に考えた。

 


考えていたが、彼が新幹線の券を同封してくれていたから、来てしまったのだ。

 


初めて降り立った東京は、目眩がするほど人で溢れていて、まるで祭りみたいだ。

 


そして、街にはサンタの人形や、カラフルなクリスマスツリー、クリスマスらしく輝いて。

 


明日、彼と会うんだ…。

 


ドキドキしながら私は、ホテルに向かい、この日のために買った高い入浴剤で肌を整え、眠り…。

 


…。

 


どうして、こういう日に限って寝坊してしまうんだろう!

 


大変だ、大変だ。

 


ヘアセットを予約している美容室に電話をかけた。

 


「すみません…私、寝坊してしまって。一時間ほど遅れてしまいます」

 


「大丈夫ですよ。丁度その時間キャンセルが出たんです」

 


とりあえず一安心だ。

 


さあ、洗顔やら歯磨きを済ませなきゃ。

 


わざわざ買い揃えたシャネルの化粧品で必死に顔を塗装しながら時計をチラチラ。

 


イライラしてきた。

 


やっと納得して、わざわざ買い揃えた服に着替え、わざわざ買った靴を履き、わざわざ買った鞄を…

 


あ!!!!!

 


壊れた。

 


取手が外れた。

 


最悪。

 


鞄を抱いて、とりあえず走り出す。

 


なんなの、なんなの、一体なんなのよ。

 


駅について、鞄を開け、切符を買おうと…財布を忘れてきていた!

 


ああああああーーーー!!

 


ダッシュで戻り、今度は部屋のカードキーを置いて来たことに気付く。

 


地団駄を踏んだ。

 


ダンッダンッダダダッ。

 


フロントに向かい、鍵を発行し直してもらう…再発行料3000円は地味に痛い。

 


結構、時間かかるわね。

 


早くしてよ早く。

 


 


やっと美容室について、ヘアセットが終わり、CMみたいに輝く髪を手に入れた。

 


色々あったけど、ひとまず外見はマトモにできたかしら?

 


しかし、気がかりなのは、彼との待ち合わせだ。

 


美容室の予約は早めにしたから大丈夫、なはずだったが、20分は確実に遅刻するようだ。

 


鳩が手紙を届けてくれる、なんて絵本みたいな事が実現するなら、どうか遅れてください、と手紙を書きたい。

 


とにかく急ぐんだ。

 


また走って駅まで向かい、今度は彼と待ち合わせた渋谷に。

 


は?

 


なんで止まってんの、電車…。

 


事故?ああそう、知らないわよ。

 


急いでいるのにさ。

 


頭を抱えてしまった。

 


抱えたまま、駅を出てタクシーを探す。

 


空車、来い、空車よ。

 


来た!

 


手前の人が乗って行った。

 


もう死んでしまいたい。

 


いや、でも、もう次が来た…良かった。

 


手前の人が乗って行った。

 


はぁぁ!?

 


どうなってんのよ一体。

 


普段はしないはずの貧乏ゆすりが止まらなくなる。

 


早く来てよ。

 


やっと来た!

 


手をあげて、ピョンピョン跳ねた。

 


タクシーが止まった…はぁ、良かった。

 


これで彼に無事に会えそうだわ。

 


「渋谷駅まで、お願いします」

 


「あいよ」

 


ふぅぅっと安堵のため息を吐き、背もたれに思いっきり体を任せて。

 


考えた。

 


遅刻した上に、私は可愛くない。

 


彼に会うのが怖くなってきた。

 


彼の顔は知らないし、もちろん私の顔を彼は知らない。

 


だけど、きっと素敵な人なんだと思う。

 


いつの日か彼が送ってくれたマフラーを取り出し、首に巻いて、ギュッと掴んだ。

 


私と会ったら、彼はきっとガッカリする…。

 


せめて少しでもマシに思われたくて頑張ってお洒落したけど、必死に若作りしてる痛いオバチャンみたいに見えたら…。

 


今、私は31歳だけど、ものすごく老けて見られる。

 


帰りたい、けど会ってみたい。

 


私は、会った事もない男の人に本気で恋をしてしまったのだ。

 


ドスン!!!

 


 


あら。

 


タクシーが思いっきり壁に激突している…なんだ、そんな事か。

 


じゃないわよ!!

 


「うわぁ…ごめんなさい、ぶつけちゃいました」

 


なによ、この運転手は。

 


もういい。

 


運転手は、そんな状況の中でもヘラヘラしながら話す。

 


「すみません、歩いて行ってもらえますか?そこを真っ直ぐに歩けば20分ほどで着きますから」

 


大遅刻が、スーパー大遅刻になった。

 


黙って金を払って降り、私は走った。

 


メロスになった気分だ。

 


走れ、走れ、メロス。

 


走れ私。

 


多分だけど一時間半は遅刻してるはずだ。

 


涙が出てきたけど、走るのはやめない。

 


がんばれ私!

 


おっと、おっ、小石か!あーっ。

 


躓いてしまった。

 


そして、私の図体は泥の中へ。

 


せっかく買った服が…セットした髪が…化粧が…。

 


ああ、もう、彼に会うのなんか、やめちゃおっかな。

 


うずくまって、シクシク泣いた…。

 


「大丈夫かい?」

 


目の前にハンカチを差し出す手。

 


顔を上げると、杖を携えたお爺ちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

 


「ありがとうございます…すみません」

 


ハンカチで涙を拭いた。

 


お爺ちゃんは、ゆっくり話した。

 


「君のマフラー…見たことがあるね。それに、君は赤いコートを着てくると手紙に書いていたね?」

 


「えっ」

 


「こんなお爺ちゃんで申し訳ない…会ったらガッカリされるだろうと不安だった。君が来ないのは、老人の私を一目見て驚いて帰ってしまったからだと思ったんだ」

 


「あなたが?」

 


「そう、私だ」

 


お爺ちゃん…彼は、優しい声をしていた。

 


たしかに、思った以上に年上だけど、彼の優しい目はイメージ通りだ。

 


胸がドキドキしてきた。

 


私達は、手を取り合って歩き出した。

 


「さあ、綺麗な服に着替えて、美味しいご飯を食べに行こう。それから、家に来ないか。君が聴いたことのないようなレコードを、たくさん見せてあげよう」

 


「そうね。それから二人で散歩もしたい。イルミネーションを見に行きたいの」

 

「そうしようか。とても楽しみだね」

 

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End

俺だけは、みんなとは違う

俺は、みんなとは違う

 

流行りなんか乗らないよ

 

本当は、あの映画おもしろそうだし

気になるんだけど

 

流行ってるから観ないで掲示板に悪口だけ書いとくよ

 

本当は、あのバンドのラブソング感動したけど

 

流行ってるから「ダサい」って言うよ

 

マリトッツォ食べてみたい

 

でも食べたら、みんなと同じになる

 

だから俺は、

 

死霊の盆踊りを観て

 

お経を聴いて踊って

 

虫を食べる!

 

ムシャムシャ

 

 

寂しいなぁ

 

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どーーーーでもいい!!!!!

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全く、腹が立って、立ちすぎて、もう腹が東京タワーになった気分!

 


俺はずっと疑問だった…。

 


なぜ世界は、こんなにも退屈なのか!?

 


だから、俺が喝を入れてやる。

 

しっかり、お気に入りのスーツで、挑むぜ。

 


お。

 


さっそく街中で話してるカップル発見だ。

 


「ダーリン、もし赤ちゃんができたら名前は何にしようかしら?」

 


「そうだな、男でも女でも、僕たち二人の名前の漢字を使いたいな」

 


「まあ素敵!」

 


いざ特攻。

 


事前に発声体操もやってきたし。

 


思い切り叫ぼう!

 


「おい、お前らーーー!」

 


二人は、ビックリして固まってる。

 


いい気味だぜ!バーカ。

 


「お前ら!!そんなの、俺にとっちゃ、どーーーでもいいんだよーー!!!」

 


二人は顔を見合わせて、どこかへ歩き去った…。

 


今ごろ反省してるはずだ。

 


よし、もういっちょ。

 


お!

 


大学生が駅前で喧嘩してる。

 


「あのさ、まずお前が誘ったんだよ」

 


「具合悪かったんだから仕方ないだろ!」

 


「だからって、二時間も遅れたんだぞ?遅刻するなら連絡しろよ」

 


「てか服ダサすぎw」

 


「お前ら…もういいだろ?早く行こうぜ」

 


よし。

 


特攻だ!!

 


いくぜ。

 


「おい、ゴラァ!!!」

 


「え?」

 


「お前らの個人的な話は、どうでもいい!!!黙れーーーーー!!!!!」

 


大学生グループは笑いながら歩き去った。

 


仲直りしたのか?

 


こりゃ、俺のおかげか。

 


まったく、世話が焼けるぜ。

 


さて次は…

 


っと。

 


そこに小声で電話してる女がいる!

 


耳を澄ませて、チェックしよう。

 


「本当よ…私があの人、殺してしまったの…お願い助けて」

 


ほう。

 


「女の力で、あんなの解体できない。あなた手伝ってくれたら、いくらでも出すから…助けて」

 


特攻決定。

 


「おい、このクソビッチ!!!そんな、どーでもいい話やめてくれよ!!!」

 


女は悲鳴をあげて走り去った。

 


殺人犯も驚くほど俺の言葉は心に響く素晴らしいものなんだな、と、しみじみ。

 


やっぱ、いい事するって最高だなぁ。

 


次は。

 


あっ。

 


女子高生が叫んでるじゃないか。

 


「この人チカンよ!誰か捕まえて!」

 


屈強そうな男が、ハゲジジイを捕まえた。

 


「す、すみません…いい尻だったんで、ふふふ」

 


「キモい!警察を呼びますからね」

 


屈強そうな男は、ジジイを捕まえたまま、電話をかけ始める。

 


うわー特攻しなきゃ。

 


「おい!!!どーでもいい話すんな。せっかくの公共の場だぜ!?」

 


屈強そうな男が睨んでくる。

 


「おっさん、今忙しいんだよ。あっち行ってくんねーかな?」

 


俺は負けない。

 


「うるせ!お前達が、つまんない話するから、いけないんだよ」

 


女子高生が傘を持って殴りかかってくる。

 


俺は逃げた。

 


はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。

 


どのくらい走っただろうかね?

 


気づけば俺は、マラソン大会で走る人達に、間違えて混ざっていた。

 


空気を読んで走り切ったけど。

 


優勝しちゃったよ。

 


インタビュアーが、マイク向けてきた。

 


「すごいです!スーツに革靴で、鞄を持ったまま、優勝だなんて。どうして、そんな格好なんです?」

 


腹立つな。

 


「どーでもいい!!さよなら」

 


逃げた!

 


俺、足速すぎる。

 


そして次は、葬儀場に来た。

 


喪服を着た女性2人が話してる。

 


「あの人、あなたに会いたがっていたわ」

 


「あら私に?どうしてかしら」

 


「だって私達が出会ったのは、あなたがバーベキューパーティーに誘ってくれたからよ」

 


「そうだったわね。懐かしいわ」

 


「また、みんなで行きたいって話してたのよ」

 


女は、自身の腹に手を当てて、涙ぐむ。

 


「この子も、いつか…って」

 


特攻だ。

 


「おい!!ブス!!」

 


呆然とし、視線だけ、こちらにやる女二人組。

 


「そんな話、どーーーーーでもいい!!!黙ってろや。つまんねぇよ」

 


腹に手を当てていた女が、

 


優しく微笑んだ。

 


「あなた、あの人に、そっくりだわ」

 


そして俺達は結婚した。

 


女は、超ドMだったようだ…。

 


今は綺麗な嫁さんと、可愛い子供と、楽しく暮らしながら、どうでもいい話・撲滅運動をしている。

 


てか、このブログ、どーでもよくねぇか?

 

俺が悪いの?


※今回は猟奇的な表現があります。ご注意ください。

 

…。

 

……。

 

俺はただ、興味があった、だけなのに。

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「失ってから

本当に大切な人だったと知る」

 


なんて、近頃よく聞く定番フレーズ。

 


俺はイヤホンで流行りの歌謡曲を遮断し、パソコンを開き、ゲームの中で何を着るか迷いながら、そのメロディや歌詞が耳につくものだという事に腹を立てていた。

 


コーヒーが飲めない癖に喫茶店が好きな俺は、いつも、クリームソーダを飲んだりしながら、ぼーっと過ごすのだった。

 


店員が何か言ってるけど、聞こえないので適当に頷き、画面の中の旅に出た。

 


立ちはだかる邪魔な人たちを次々と射殺し、目的の宝が隠されているであろう場所へ。

 


こんなの現実だったら犯罪だよな…(笑)

 


よく考える事がある。

 


ゲームの中も実は存在する世界で、俺というヒーローが来るまでは、敵キャラ達も、家族と食卓を囲んだり、恋人と将来の夢について語り合ったり、愛犬への誕生日プレゼントに悩んで夜が更けたり、

 


普通に幸せに過ごしてたのを、俺が暇つぶしで奪ってるんじゃないか?

 


俺はゲームの中の住人を、殴ってみたり、爆弾ぶん投げてみたり、時には逃してみたり、まあ色々試して遊んできた。

 


それでも当たり前のように復活してやがる。

 


記憶を消されて、甦り、また殺される、そんな運命。

 


そう考えると、命乞いする姿や、必死に這って逃げる姿も、見てみたくなる。

 


別に俺は、同情したいわけじゃなかった。

 


興味があるだけだった。

 


ピコン。

 


メッセージ通知。

 


俺にとって、たった一人の友達は、ゲームの中で知り合った『サメ男』という、引きこもり野郎。

 


こいつからのチャットで一旦ゲームを中断し、顔を上げた。

 


「おう。待たせたな」

 


目の前にいる、小さいのに丸々と太った、ボールみたいな奴。

 


「おう。調子はどうだ?マンボウ男さん」

 


いつも通り茶化すと、いつも通り嬉しそうに「サメだよ」と笑う、サメ男。

 


例にもよって、引きこもりってのは毎回同じような服装で来やがる。

 


20年くらい前に流行ってたバンドTシャツが伸びて、絵まで太って見えるのが可笑しかった。

 


サメ男は、毛が生えたクリームパンみたいな手で、レアカードをテーブルに置き「ほら例のブツだぜ」とニヤついた。

 


俺も、交換したいレアカードを置いて、闇の取引完了だぜと二人ふざけて笑った。

 


あー。

 


何も変わらない日常。

 


そんな俺を見透かしたように、奴は、いつも言った。

 


「お前って、いつもどこか寂しそうだよな」

 


あと、

 


「イケメンなんだから彼女くらい作れよ」

 


はは。

 


俺別に、イケメンじゃねーよ。

 


自分が不細工だから、みんなイケメンに見えるんだろ、お前は。

 


なんて意地悪な事を考えながらも、冗談かましてみた。

 


「あー実はさ、俺お前の母ちゃんに惚れてんだよね」

 


「はぁ?やめてくれよー!」

 


「いやぁ、たまんないぜ。お前が母ちゃんにもらった二万円、一日でパチ代に消えた時の怒号に胸キュンしたね」

 


そう言うと、こいつはまた馬鹿みたいに手を叩きながら笑った。

 


あの夜、俺達は電話でダラダラと、大金持ちになったら何するかって話をしてた。

 


サメ男は、ソープ行くだの、芸能人の下着を買うだの、アホな事ばかり言ってたけど。

 


俺は、イマイチ思い付かなかった。

 


その時いきなり、サメ男の母ちゃんが部屋に入ってきて、あの二万円どうしたって話が聞こえてきて。

 


散々怒鳴りあって、母ちゃんが部屋から出て行った後、サメ男は「うぜぇ!死ね!クソババア」と悪態をついて、寝た。

 


だけど俺には希望があった。

 


もしかしたら、こいつの心にも家族愛とやらが、あるんじゃないかとね。

 


だから、こいつの部屋に遊びに来た。

 


手足を縛って、目の前で、母ちゃんの片目を抉り取った。

 


それを母ちゃんに見せてやり「自分と目が合った気分はどう?」と尋ねてみたら、ガタガタ震えながら「マサカズ…マサカズ…」と呟いてた。

 


サメ男に向き合い、話しかけた。

 


「へぇ、お前の本名マサカズ君っていうんだ」

 


サメ男は青ざめた顔で、なぜか必死に、何度も頷いていた。

 


それが面白くて、笑いが止まらなかった。

 


次に、母ちゃんの鼻をナイフで削いでみた。

 


それを母ちゃんの額に乗せ「みて!マサカズ君、お母さん福笑いになっちゃったよ」とギャグを言ったけど、滑っちゃった。

 


サメ男は、ただ震えながら涙を流し、息を荒げていた。

 


それから俺は、母ちゃんの服を脱がし、下着も剥いで、裸にして、乳首を切り落とし、キッチンの炊飯器から米を持ってきて、寿司にしてみた。

 


「見て見て!

マサカズ君、お寿司、好きだったよな?

俺初めて寿司なんか握ったぜ!」

 


口に運んでやると、顔をブンブン振って拒否された。

 


腹立った。

 


「お前…友達が握った寿司が食えないってのかよ!流石に酷くねーかぁ?」

 


そう怒鳴りつけながら、腹を蹴ってみた。

 


ぼよよーん。

 


やっぱ、デブだな、こいつ(笑)

 


サメ男は、ぐべぇ!と辺な声を出して、大人しくなってくれた。

 


寿司を口に運んだら、すぐに口から出して、また泣いちゃった。

 


ああ、愉快。

 


それから次は、ヘソの中がどうなってるのか気になったから、母ちゃんのヘソを、ナイフで縦に広げてみた。

 


意外と皮膚が厚くて、白い脂肪層が、ブニュブニュ出てきて、そこから脈打ちながら血が出てきた。

 


脂身かな?

 


それを切り取って、キッチンに行き、フライパンに塗って、目玉焼きを焼いてみた。

 


…。

 


意外と癖がないけど、ちょい血生臭いかもな。

 


あはははははは はははははは ははは!

 


楽しくて、楽しくて。

 


俺の遊びは止まらなかった。

 


バッドを母ちゃんの膣に挿入して思いっきり蹴ったら、すげぇ苦しそうな顔をした。

 


「あれ?おばさん、こんな巨大デブ産んだんだから、平気なんじゃないの?」

 


なあ?とサメ男を見たら、さっきとは違い、魂が抜けたみたいに呆然としてた。

 


つまんないから、ちゃんと見てろ!と叱り、殴ってあげたら、また目が覚めたみたいに怯え出した。

 


なので、今度は「手術しまーす」と、腹を思いっきり裂いた。

 


力が要る。

 


少しずつ、ザクザク開けた。

 


血が飛び出して、派手な情景に感動した。

 


初めて見る人間の内臓は、犬や猫とは全然、比べ物にならないくらい大きかった。

 


テカテカ光ってて、脂っぽいかんじがした。

 


あっ。

 


母ちゃんが、動かなくなった。

 


死んだようだ。

 


サメ男の髪を掴んで、目を見た。

 


「マサカズ君、良かったね!クソババア本当に死んだよ!褒めてくれる?」

 


すると、サメ男は、青白い顔を、シワクチャにして、小さい目を二倍にかっ開いて、お面みたいになって、言った。

 


「殺さないでください」

 


 


なんだよ。

 


母ちゃんの大事さより、自分の命か。

 


ガッカリだよ、サメ男。

 


ねえ、おまわりさん。

 


逮捕するなら、サメ男も逮捕してくださいよ。

 


こいつは自分の母親が目の前で拷問されて死んでも、自分の命を優先したんです。

 


思えば一緒にゲームしてて俺が死んでも、ザマアミロ!とか馬鹿にしてきました。

 


でも、こいつ、自分が死んだ時めちゃくちゃ怒るんです、あり得ないでしょ?

 


え?

 


…。

 


……。

 


………は?

 


俺が悪いの?

 

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後書き

 

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

 

僕は疑問に思うんです。

 

他人を優先してやる事が「愛」だなんて間違っていると。

 

だけど、優先する事を押し付け、それが受け入れられないと「愛されてないんだ」と落胆する人って、いるでしょう?

 

そもそも他人を頼りに生きてる時点で、ダメです。

 

自分を守れてこそ、他人を守れるのです。

 

まずは自分が、しっかりしないと、いつまで経っても赤ちゃんです。

 

まあ、自分の世話だけでも大変ですよね。

 

だから人は孤独なのかな?

 

僕まだ若いから、わかんないや。

 

とりあえず家賃ちゃんと払えて良かった…。

 

んじゃ、またね。

 

『叶わぬ恋』そして『完全なる愛』

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「なあ、頼むぜ…美咲」

 


「嫌だ」

 


「俺に床で寝ろって言うのかい」

 


「私に一晩中 怯えてろって言うわけ」

 


「何もしないってば」

 


嘘だわ。

 


男がいきなり電話してきて、家に上がるだなんて、お金がなくて娼婦も相手にしてくれなかった時くらいじゃない。

 


オマケに、こんな言い訳…。

 


「本当なんだ。本当に、目を覚ましたら、血塗れだったんだ。ベッドを見せたいよ。困ったな。信じてほしいんだ」

 


あり得るわけない。

 


それに、もし本当ならば。

 


「あんた警察に通報しなさいよ」

 


「怖いんだ」

 


馬鹿な男だこと。

 


怖かったら、尚更すぐに警察に駆けつけて助けてほしいはずよ。

 


「知らない。おやすみなさい」

 


ガチャリ。

 


受話器を、いくらか乱暴に置き捨て、冷めてしまった緑茶を飲んで。

 


あの男と出会ったのは、昨晩のこと。

 


久しぶりに街まで出て、ふらっと立ち寄ったジャズ・バーで、ひとり白ワインを嗜んでいたら。

 


「あちらのお客様からです」

 


まあ、ドラマみたい。

 


あちら側には、緑色の変わった上着を着て、イタズラっぽく頬杖をつき、笑顔を浮かべる痩せた髭面。

 


気取り屋の面倒な男ね。

 


自慢だけど、私はかなり美人で、女優にならないかと、よく声を掛けられるの。

 


だから、ハンサムな男としか話したくない。

 


それに…。

 


私は笑顔を返し、立ち上がり、カクテルを持って彼の隣に座った。

 


「私、美咲。お酒ありがとう」

 


「君が綺麗だからさ」

 


「何百回も聞いてるわよ」

 


そう、もっと斬新な口説き文句を求めてるのよ。

 


ハンサムな男くらい、この私には、いくらでも寄ってくる。

 


だけど、それだけで私を靡かせるなんて、できないわ。

 


特に馬鹿な男はダメね。

 


紫色のカクテルが、怪しく光って見える。

 


私は、彼に教えてやろうとしたの。

 


「ねえ、あなた。ブルームーンのカクテル言葉をご存知?」

 


「知ってるのかい?」

 


「ええ。『叶わぬ恋』よね。口説く時に奢るようなお酒じゃないわ」

 


「君は知らないんだな。ブルームーンには二つの意味があるんだ」

 


得意げに、語り出す男。

 


「それには『叶わぬ恋』って意味と『完全なる愛』って意味がある」

 


ウイスキーを、チビっと舐め、すこし顔を近づけてきて。

 


「わかるかい?」

 


私は、知識を得た事と、男の仕草が意外にも上品な事にドキドキしながらも、不敵に笑み「さあ」と言う。

 


「つまりね…どっちの意味になっても、俺は構わない。こんな俺だけど、君さえ良ければ、君と少しでも話してみたかっただけなのさ」

 


気取り屋だけど、謙虚な人。

 


気に入った。

 


「ねぇ、それなら、少し公園を散歩しましょうよ」

 


そう、それから私達は公園を歩いて。

 


そこから、記憶が曖昧で。

 


あの後、少しだけ彼の部屋で映画を見たのを覚えてるわ。

 


目を覚ましたら、ソファ、夕方で、電話番号のメモを財布から見つけ、夕日が照らす橙色のリビングの中、3歩だけ歩いて、彼の番号、ダイヤル回して。

 


「私あんまり昨日の事、覚えてなくて…大丈夫だったかしら?」

 


彼は、酔い潰れた私を家まで送ったらしく。

 


まさかエッチしてないかと不安になったけど、そうだったら私は下着を履いてないはずだわ。

 


エッチした後に、前の同じ下着を履くのは、なんだか苦手なんだもの。

 


いや、それより、ソファで呆然としたまま二度寝してしまって。

 


先程…。

 


午前二時…電話で起こされて。

 


ベッドが血塗れだから、家に泊めてくれ、なんて言われて。

 


一気に冷めちゃった、ってとこ。

 


馬鹿な男は、みんな消えちゃえばいい。

 


そんな嘘を信じる女に見えたかしら?

 


スカートが派手な赤色で、短かったから?

 


髪を結んでなかったから?

 


カクテル言葉を知らなかったから?

 


はぁ。

 


とにかく今夜は疲れてるのよ。

 


仕事から帰って、すぐ、ソファで寝てしまい、夜中に電話で起こされて。

 


さっさと、ベッドで眠りましょう。

 


…えっ。

 


これ、って。

 


見覚えのある緑色のジャケット。

 


彼のだわ。

 


とりあえず、ハンガーに、掛けておきましょう。

 


コロンっ。

 


小さな瓶が、床に転がり落ちる。

 


『俺を試せば 君はスターになれる

その後 最悪の悪夢に 魘されるだろう』

 


噂で聞いた事がある、魔薬。

 


間違いない。

 


青い花びらが入った小瓶なんて、あの噂でしか聞いた事ないんだから。

 


考えてみれば、彼は特別ハンサムでもなかったし、ただ、カクテルに詳しいだけ。

 


きっと普段から、あんな気取った事をするような人じゃない。

 

私をまやかしたのは、この小瓶だったのね。

 


彼のポケットに手を入れると、冷たく固い感触を覚え。

 


空の小瓶が、たっぷりある事に気付く。

 


幸いにも、彼の部屋の場所は、なんとなく覚えてる。

 


ああ。

 


彼が『叶わぬ恋』をしていたのは…。

 


『完全なる愛』なんて理想でしかなくて。

 


なぁんだ、

可哀想な男だわ。

 


私は彼に、緑色の上着と、

 


小瓶を届けに向かう事にした。

 

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所詮、恋なんて、ごっこ遊びで充分なんです。

 

相手が「ただの人間」だと気付いても、

 

愛おしく思えたら、そりゃもう運命です。

 

って近所のボケ入った爺さんに言われたんですけど。

 

僕には、まだよくわかりません。

 

ただ「ごっこ遊び」の恋…というか、

 

人生ずっと何かを演じているような、

 

そういう気持ち悪さに、気付くキッカケになりました。

 

誰でも、家族に見せる顔、友達に見せる顔、職場で見せる顔、色々あるでしょ。

 

それが当たり前なんだけど…。

 

やっぱり自然体でいても許してくれる人がいたら嬉しいよねって。

 

これ読んでる人は、そういう人達or馬鹿にしてる人達、なので、書いててストレスないです。

 

ありがとう。

 

村上さんより

あなた、死にますよ 3

※この話には前編があります。二つ前の記事からお楽しみください。

 

「お揃いの ペアマグカップ

 

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あれから、新聞ギャルを見つける事は、できなかった。

 


それどころか、喫茶店にも来なくなった。

 


気が付けば、コンドーム五箱分、彼氏とは続いていて、先日プロポーズされ、同棲を始めて、幸せな気分でいっぱい。

 


あれは悪い夢で、私が疲れていただけ。

 


広いリビングに、水色の可愛いソファ、それに、大きな富士山の油絵も飾り、もう新婚さん気分。

 


両家の挨拶やら、色々済ませたら、いよいよ結婚。

 


ああ、楽しみで仕方ない。

 


ハミングが溢れ、鍋がグツグツ音を立てて、甘いシチューの香りでキッチンは包まれ、お揃いのマグカップに早く食後の紅茶を淹れたくて、ウズウズする。

 


ピンポン。

 


帰ってきた!

 


「おかえり!シンジ、待ってた」

 


柔らかいお腹に抱きついて、幸せを噛み締める。

 


私が、これから、もっと太らせてあげるんだからね。

 


 


いつもなら抱きしめ返してくれる彼が、微動だにしない。

 


具合でも悪いのかな?

 


顔を上げると、神妙な顔をしていて、突然こう言い放った。

 


「出て行ってくれ」

 


…?

 


なんで?

 


言葉が出ない。

 


急に、なんだって?

 


混乱する中、彼は更に続ける。

 


「ごめん。君には悪いと思ったけど、興信所に依頼したんだ。もう全部わかってる」

 


 


「なんの、こ、と?」

 


「お前の浮気だよ!!!」

 


急に怒鳴り、また、涙を流し始める彼。

 


「俺は、こんなに尽くして来たのに…この尻軽女め。しかも相手の荒井コウヘイってやつ、嫁いるし、60超えてるだろ。お前おかしいよ」

 


心臓が、針で、ぷつんと割られたみたいに、跳ねる。

 


荒井コウヘイ…。

 


名前だけは、聞き覚えがある。

 


そうだ、あのオッサンが言ってた…。

 


私は彼を突き飛ばし、走る。

 


このままじゃ、嫌だ。

 


もう、どうなっても知らない。

 

彼を失った今、私は何も持っていない。

 

私が『井梅セイコ』を終わりにする。


両足がバラバラに折れんばかりの勢いで軋み、息が乱れて、吸ってんのか吐いてんのか、わからなくなる。

 


やっと、交番。

 


私は、思いっきり叫ぶように、告げる。

 


「九川リョウコを、滅多刺しにした凶器は、山に捨ててあるんです!もっと、よく探してください!一番大きな木の側に、埋めて、ありますから!」

 


静まり返る、交番。

 


「でも…私は、やって、ません」

 


6年後

 


私が、知らないと言い張った事もあり、だいぶ長い時間が経った。

 


だけど証拠は、後から、いくつも出てきた。

 


ナイフには、私の指紋が、びっしり。

 


きっと私が間違ってたんだろう。

 


罪名 強盗致死傷罪

 


ただの殺人じゃなかったらしく、悪質な犯行だから、とか、えーと…そんなかんじ。

 


私がやりましたと素直に言った瞬間から、刑場で首に紐をかけられるのは、すぐだった?ような気が…?

 


やっと終われる。

 


良かった。

 


さようなら、お母さん。

 


さようなら、お父さん。

 


さようなら、シンジ。

 


ああ、ついに終わる時が来たようで。

 


ガクン、と体が落ちて…

 


その時一瞬だけ、最後の最後、

 


「あの新聞ギャルは、

オッサンは、

…何だったのかしら……?」

 

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おしまい

 

の、ようだが、おわり、ではない?

 

ふふふ 井梅さん あなたは。

 

あなた、死にますよ 2

この話には前編があります。一つ前の記事から、お楽しみください。

 

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忙しなく動き回ってるうちに、夜。

 


さすがに閉店の時間が近付けば、お客さんは減って、静かな喫茶店らしい喫茶店に。

 


本当は落ち着いた雰囲気の喫茶店で働きたかったから、夜は私にとって最もマシな時間。

 


新聞ギャルだけが変わらずに、新聞を読んでるけど、あの人、新聞を読むのに何時間かけてんだろうか。

 


デート明けの日の夜は、さすがに寝不足なもんで、うとうとする。

 


チリン。

 


レジのベルが鳴って、向かう。

 


新聞ギャルが、ようやく帰ってしまう。

 


お会計を済ませ、あくびをし、窓から外を見ると、新聞ギャルも眠そうに、あくびをしながら歩き去って行った。

 


午後9時半。

 


後30分もしたら閉店し、掃除して帰るのみだ。

 


さっさと帰りたい。

 


そう思うと、働く力が湧いてくる。

 


さっさと終わらせるんだ。

 


新聞ギャルが座ってた席へ、片付けに向かう。

 


食器を下げ、テーブルを拭き、椅子…。

 


椅子に、忘れ物をしている。

 


学生証だ。

 


あの人、大学生だったのかぁ。

 


 


名前が…。

 


井梅セイコ。

 


生年月日は、私と同じ。

 


証明写真も…私と同じ?

 


そっくり、すぎる。

 


力が抜けて、その場に、へたり込む。

 


すると、彼女が置いて行ったであろう新聞記事が目に入る。

 


「九川リョウコ 茶吹山で遺体発見

状態は最悪 滅多刺しの 凶器はどこへ」

 

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続く